茶室・竣工2011/05/25 11:45


茶室・床の間


永らく設計と監理に携わってきた、住宅の茶室部分の、
西の内紙と湊紙も布海苔で貼り終わり、ほぼ、竣工しました。

湊紙・腰貼り

西の内紙も湊紙も千家十職の奥村さんから送っていただいた紙。
作業は紙を寸法に切りそろえ、布海苔で聚楽壁に貼っていく。
布海苔は海草で、寒天みたいなものです。
煮詰めても普通ののりのようには粘着性が出ず、本当に貼れるのか?
と若い職人さんと首をかしげながらの作業でしたが、そこは流石にプロ。
紙に布海苔を塗り、毛足の短い刷毛で聚楽壁にたたき込むように貼っていってくれました。
水分を聚楽が吸ったのか、一日でピンと壁と一体化しています。
そもそもは土壁を帯などで痛めないように貼ったのが始まり。布海苔で貼った紙は2~3年もすると土壁を痛めずに、はらりと剥がれてしまうものなのだそうです。
湊紙は、黒に近い濃紺で、初めて見たときはこんなに濃い色なのと思いました。
事の起こりは究極のエコのはずが、時代を重ねて繰り返し使われることで様式化し、美的要素の一つとして空間を引き締めています。

床框と湊紙・対比


朴の木・溜漆仕上げの床框と湊紙は向き合うように配され、
一つは光を溜める物、一つは光を吸い込むものとして、
空間の中に対比による緊張感を生み出しています。
5尺7寸の波に鱗鶴の襖と9寸の西の内紙、
柱と鴨居による構成は、モンドリアンの絵のようにも見えます。

波に鱗鶴・打ち出しの引き手


波に鱗鶴の襖紙と打ち出しの引き手。
楕円の引き手をあえて横使いをしています。